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幸せのカタチ 5

2009/01/23 Fri 11:00

一時的な記憶の混乱。
その願いはあっさりと否定された。
一週間経っても記憶が戻ることはなく。
はじめのうちは涙が止まらなかった。
でもそのうち不思議なほど納得できてしまう自分がいた。

もとの自分に戻っただけだと。
何も持ってなかった頃に戻っただけだ。
きっと自分は夢をみていたんだ。
コーンがくれた幸せな夢。
敦賀蓮=久遠・ヒズリ=コーンだと知ったのは、付き合いだして半年経った頃だった。
昔の自分を知って私が離れてしまうことが怖かったと彼は話してくれた。
たしかにびっくりした。
彼が日本人ではないこと、先生と私が慕うハリウッドスターのクー・ヒズリの実の息子であり、私の思い出の中の男の子―コーン―だったこと。
正直、どうして教えてくれなかったのかと腹立たしい気持ちもあったし、コーンは妖精じゃなかったという残念な気持ちもあったけど、それ以上に自分の好きな人と昔から繋がりがあったことを嬉しく思った。
私は昔からずっとこの人に支えられてきた。そう思うだけで、なんだか全てが愛おしかった。

でも、やっぱりコーンは妖精だったのかもしれない。
だってほら、私にたくさんの幸せを運んでくれたもの。

だから、再検査後やっぱり彼に私の記憶が一切ないことを社長と社さんに聞かされたときに私は決心した。
社長にも社さんにも止められたけど、私にはそれが一番いいとしか思えなくて。
無理を言って了解してもらった。
モー子さんにも私の決心を話した。
モー子さんは彼に対して許せないって私を想って言ってくれたけど、彼が悪いのではないことを何度も説明した。
そう。
悪いのは彼じゃない。
悪いのは全て私だから。

たくさん幸せをもらったのに私は・・・・・。

だから私の精一杯であなたの未来を守ります。
こんなことしかできない私を許してください。


*********


死んだような目をしたあいつを変えたのは演技だった。
それでも誰かを愛することを知らなかったあいつを人として変えたのは最上キョーコという愛したくも愛されたくもない女の子だった。
彼女は過去のトラウマから愛というものに臆病になっていて、俺はそんな彼女をラブミー部というセクションに入れた。
彼女の恋愛に対する歪曲思考は相当なもので、それでも周りを引き付ける不思議な魅力をもっていた。
蓮も過去は薄っぺらい恋愛しかしてきていなかったようで本物の恋愛について演技では苦労していた。
そんな蓮に本物の恋愛感情を抱かせたのが最上キョーコだった。
傍から見ていて二人にはそうとうヤキモキさせられたが、その二人から付き合いを報告されたときは心の底から嬉しかった。(付き合いはじめパーティーを盛大にしたかったが、二人に強く断られた)
愛を知った二人は仕事でもぐんぐんと実力を発揮していき、蓮は相変わらず抱かれたい男のトップの座を維持しているし、最上くんはつきあいたい女の子やお嫁さんにしたい女の子などのランキングのNo1になったりしている。
もともと礼儀がきちんとしているから役者仲間やスタッフからも評判がいいことは事務所の人間から聞いていた。

そして付き合いだして2年。
蓮もそろそろ結婚を考えているらしく、まあ結婚に関しては付き合い始めてすぐにでもしたかったようだが最上くんが未成年だから、せめて親の承諾がいらない20歳までは待ってということで二人はしっかりと未来を見据えて付き合っていた。

そんなときに起こった事故。
蓮は最上くんの記憶を全て失っていた。
他のことは覚えているのに、彼女の事だけを。
あんなにも彼女のことを愛していたのになぜこんなことが起こるのか。
どうすれば蓮が最上くんのことを思い出すのか。

社長室で社と蓮のことを話していたときに仕事帰りだろう最上くんが訪れた。
「最上くん。仕事あがりか?お疲れさま。」
「お疲れさまです。社長。」
彼女はたった数日間でやつれた顔をしていた。
無理もない。最愛の恋人があんなことになったのだ。
「こっちに来て掛けなさい。」
「はい。」
最上くんは表情を硬くしたままゆっくりとした動作で俺の斜め前のソファに腰掛けた。
茶を出すが、ありがとうございますと静かに言った後飲まずにただじっと静かにテーブルの上のティーカップを見つめていた。

「・・・キョーコちゃん」
静かになった部屋の空気をはじめに破ったのは社だった。
「キョーコちゃん。ちゃんと眠ってる?ごはん食べてる?」
最上くんは社のほうを見て「大丈夫ですよ。」とだけ言った。
笑顔で。
でも笑っていない。今にも泣きそうな・・・・。
大丈夫なはずはない。
いつも他人に迷惑をかけまいとする子だから、今回も自分のことは他人に話さない。
だから俺は「そうか。」とだけ答えた。

「社長。お話しがあります。」
今度は俺のほうにからだごと向け、まっすぐに俺を見て彼女が話し出した。
その真剣な表情から何か嫌な予感がした。

「敦賀さんが私のことを思い出すまで、私と彼の関係を彼に言わないでもらえませんか?」
「な・・・」
「キョーコちゃん!何で・・・っ!?」
最上くんは社の問いには答えずに話を続ける。
「お願いします。私と彼の関係を知る全ての人に伝えてください。」
「ちょっと待て。最上くん。それは一体どういうことなんだ?蓮には何かきっかけを与えれば思い出すかもしれないじゃないか。君は蓮に思い出して欲しくないのか?」
「そうだよ。キョーコちゃん。」
俺と社の言葉に最上くんの表情がどんどん翳っていくのがわかる。
泣きたいのに必死で耐えている、そんな表情・・・。

「お願いします。わがままを言っていることはわかっています。でも・・・お願いします。彼を守りたいんです。」
なぜ蓮にだまっていることが蓮を守ることになるのかわからなかった。
「・・・それを簡単に了承するわけにはいかない。最上くん。全てを話してくれないか?君がそう考えた理由を。話しはそれからだ。」

最上くんはしばらく黙った後、ゆっくりと話し出した。
蓮を守ると言った理由。
そして、今後の自分について。
それはあまりにも彼女にとって悲しい決断で・・・。

社も俺も反対した。
そんなことはできないと。
蓮の未来も大切だが、それ以上に彼女の未来も大切だからと。
でも彼女の決心は固いもので、断固として譲らなかった。
だから、彼女の意見を尊重するとともに、こちらも条件を出した。

蓮が京子のことを自ら聞いてきた場合、聞かれたことには正直に答えると。
彼女はその条件に躊躇した表情をみせたが、納得してくれた。

さあ、蓮。
お前が生涯を共に過ごしたいと想った女性を逃がしたくなっかたら自分の力で思い出してくれ。お前が望むならいくらだって手助けしてやるから。
・・・・頼む。彼女を助けてくれ―――――――――

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