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幸せのカタチ 4

2009/01/22 Thu 11:08

身体が動かない。
なんでこんなに真っ暗なんだろう…?
ただわかるのは誰かが俺の手を握ってて、それがひどく安心できるということ。


幸せのカタチ 4



久遠…

え?
誰だ?

久遠…

誰かが俺の名前を呼んでる。
日本に来るときに捨てたはずのその名前…。
俺を呼ぶのは……誰?

ふと自分の意識が浮上するのがわかった。
きっと自分がいる部屋の中で誰かが話しているんだろう声が聞こえる。
一人は俺のマネージャーの社さんだということはわかる。
じゃあもう一人の女性は―――?

「ん…」
目を開けて一番はじめに見たのはぼやけた天井。
段々はっきり見えてきた天井は見慣れないものだった。

「・・・社さん・・・?」
少し声がかすれる。

「蓮っ心配したんだぞっ。事故に遭って3日も目覚めなかったんだ!!」
「・・・・っ事故・・・?」
「そうだっ。覚えてなくても無理ないか。」
事故・・・3日・・・?何も思い出せない。

「キョーコちゃん!はやくこっちに!!」
突然知らない名前を社さんが呼んだ。
その呼ばれた当人だろう、茶髪の女の子が、俺の近くまで寄ってきた。
見たことのない女の子。

「・・・・・・・・誰ですか?」
そう聞いた俺に社さんは目を丸くして聞き返してきた。
「なっ…何言ってるんだよ蓮?」
「何って…その子社さんの知り合いですか?」

「あ…あの…」
その子はひとこと声を出した後、黙り込んだ。
何なんだ、この子は。

「蓮!何を言ってるんだよ!キョーコちゃんだろ!お前の愛しの!!散々心配かけといてそんな冗談悪趣味だぞ!」
悪趣味って・・・そんなことを言われても俺には全く身に覚えはない。
「社さんこそ何の冗談ですか?オレとその子が何だっていうんです?愛しのって一体何のことですか」
またお祭り好きの社長の仕業か、はたまた俺のファンの子がうまく社さんをたぶらかして入り込んだか。
無意識にするどい目つきをしてしまったんだろうか。その子は顔色をさっと変えた。
ああ、敦賀蓮にあるまじきことだと少し後悔したが、その子はすぐにドアのほうに向かって行った。

「っやし…ろさ…っ…私…帰りますね…」
「えっキョーコちゃん!?」
社さんがあわてて近寄っていく。
その子は振り向いて、
「敦賀さん。元気そうでよかったです。一日も早く良くなってくださいね。ファンとして応援してます。」
そう言って部屋を出て行った。
彼女は笑っていたのに、淋しそうにも見えた・・・・。

「キョーコちゃん!!」
社さんも出ていく。
だんだんと遠くなっていく声を誰も居なくなった部屋でただ静かに聞いていた。

しばらくして社さんだけが戻ってきた。
「結局なんだったんですか?あのこ。ファンの子ですか?」
「・・・・・・・・・・」
「社さん?」
社さんは俯いていた顔をゆっくりあげた。
その顔はいつもの社さんの顔ではなく、どことなく怒ったような・・・・

「蓮・・・今冗談だといってキョーコちゃんを追いかけるなら許してやる。」
静かにそう言った。
冗談?
さっきからこの人は何を言っているのかわからない。
「社さんこそ何を言っているんですか?冗談を言っているのはそちらでしょう。だいたいあの子を追いかけてどうしろっていうんですか?あの子俺のファンなんでしょう?ファンサービスをしろってことですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・蓮?」
「はい?」
「本当に・・・覚えてないのか・・・?」
「覚えてないって何をですか?」
「・・・・・・・」
社さんの顔色がどんどん悪くなっていく。
何か悪いことを言ったのだろうか?
「どうしたんですか。一体?」
「お・・・俺っ。ちょっと事務所に連絡してくるっ」
明らかに慌ててますという感じで社さんが部屋から出て行った。

わけがわからないのはこっちの方だ。
目が覚めたら事故に遭って3日眠ってたっていうし、アバラもイってるのか痛みもあるし。
目が覚めたとたん変な冗談は言われるし。
愛しのだって?
そんな存在今の俺は作れないんだ。
キョーコちゃんって社さんは言ってたけどそんな知り合いはやっぱりいない。
俺の中でのキョーコちゃんは、昔京都で出逢ったあの泣き虫の女の子だけなのだから――


社さんが戻ってきて、主治医だという40台の男性医師から説明を受けた。
身体は肋骨のヒビが入っている以外は特に問題はなく、2週間程度の安静でよいということだった。ただ、頭はデリケートな部分だからと、再検査をすることになり。
その検査後の説明の時には、社長も来ていて。
特に異常は見られないとの診断だった。

とりあえずは1週間の入院をして、その後は自宅療養とのことで、俺は自分の部屋に帰ることを望んだが、社長が俺一人だと食事もしないから療養にならんと断固反対し、結局安静の必要な日数は社長宅で過ごすこととなった。
マリアちゃんはかいがいしく世話をやいてくれる。
でも、時々寂しそうな顔をしていた。
マリアちゃんにどうしたのか聞いても「なんでもないの」と言われるだけ。
目覚めた後の皆の違和感を感じてはいるけど、それがどうしてなのか答えてくれる人はいなくて。

特に何もすることがなく、マリアちゃんとテレビを見ていたときだった。
リップのCMに見覚えのある女の子が映っていた。
それは自分の病室に居たあの女の子で―――

「マリアちゃん・・・この女の子・・・」
俺は目をテレビから離すことなく、隣に座っているマリアちゃんに話しかけた。
「おねえさま。蓮様、キョーコおねえさまよ?」
マリアちゃんの声のトーンが明るくなった。
「おねえさまって・・・マリアちゃんこの子のこと知ってるの?」
「え・・・ええ・・・。おねえさまは京子っていうタレントよ。女優としてドラマにも出ているわ」
「女優・・・」
マリアちゃんがおねえさまと呼ぶほど仲のよい彼女となぜ自分は逢ったことがないのだろう。
まして、名前も聞いたことがないなんて。
「彼女は最近デビューしたの?」
「・・・・いいえ。おねえさまがデビューしたのは3年前ですわ。」
「え・・・・・・」
3年も前・・・?
そんなに売れてないのだろうか?
でもCMに採用されているほどの人物なのに?
思考の中で葛藤していると、その部屋に場にそぐわないほどの煌びやかな人物が入ってきた。
「マリアはもう寝る時間じゃないかな?」
「おじいさま・・・」
「それにコウキからメールがくるだろう?」
「・・・はい。じゃあ、おやすみなさい。蓮様。おじいさま・・・」
「おやすみ。マリアちゃん。」
「おやすみ」
マリアちゃんはまた淋しそうな顔をして部屋から出て行った。
そして部屋には社長と2人。
なんとなく気まずいと思った。
「あの・・・」
「なんだ?」
「いえ・・・・」
「なんだ。何も聞かないのか?それとも聞けないのか?」
「・・・どういう意味ですか・・・?」
「あの子のおかげでヘタレも少しはマシになったかと思ったのに。」
「・・・ヘタレって誰がですか」
「は~~~~~~~~~~~~~」
社長が大きく溜息を吐いた。
「お前だよ。お・ま・え!」
指を指されて大きな声でそう言われた。
はっきり言って心外だ。なんで病み上がりで(まだあがってはないけど)そんなことを言われなければならないのか。
「いいか、蓮。今回のことはお前が悪いわけじゃない。だがな?このままだとお前の大切なものがなくなってしまうことは確かだ。だから、お前はお前の力できちんと思い出せ。いいな?」
「何を思い出せというんですか」
「そんなこと自分で考えろ」
言いたい放題言った後、社長は颯爽と部屋を出て行った。
「ちょっ・・・社長・・・っ」
呼び止めたのに部屋にひとり残された。

思い出せ。
社長は確かにそう言った。
俺が忘れていること。
それは何――――――?


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