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優しい時間 37

2010/10/31 Sun 18:00


これがUPされるころには確実に東京にいます。

予約投稿です。

36話は8月更新でしたね・・・(びっくり)
お待ちいただいた方、申し訳ありません。
お待ちいただいた方、ありがとうございます。

それでは37話です。








目を離さないでいられたらどんなにいいだろう。



優しい時間 37



「蓮、よかったな。今日のキョーコちゃん、昨日よりも元気そうだった」
「はい、そうですね」
昨日はキョーコについていてくれた社さんは、今日は俺と一緒にドラマの番宣のためにテレビ局のスタジオに来ていた。
たった今収録が終わり、テレビ局の楽屋に戻ったところで社さんがミネラルウォーターを渡しながらくすりと笑った。
「それにしてもお前にしてはめずらしかったな」
「何がですか?」
「いや、あんなにインターホン鳴らしたのって、・・・まあ実際鳴らしてたのは琴南さんだけど、お前のマネージャーになってから初めてだったからさ」
「・・・・・・すみません、眠っていたもので・・・」
「お前の疲れはハンパじゃないだろうから。仕事に遅れなければいいよ」
「はい・・・」

本当はあのまま眠っていたかった。
やわらかくて安心する香りを抱きしめて、そのまま夢の中にいたかった。
俺が安心できる人間はたったひとりしかいないから、今自分が抱きしめているのが誰かなんて明白だった。
なんでキョーコを抱きしめて眠ってるんだろうとか、どうしてキョーコと一緒に眠ってるんだろうとか今思うと疑問はたくさんあったけど、ただあの時は心地よくてそんなこと全く重要じゃなかった。

・・・あのあと・・・キョーコにキスをしたあと・・・キョーコの寝顔を見ながらいつのまにか眠ってしまったんだな・・・。
添い寝するカタチで見てたからそのまま・・・。

初めて触れたキョーコの唇は今まで触れたどの唇よりも甘くて柔らかかった。
もっと深く触れたくて貪りたかったけど、触れるだけでぐっと我慢した。
だってこれは俺の一方通行で自分勝手な押し付けだから。
キョーコの唇に本当の意味で触れることができたとき、想いをちゃんと交わしながらキスをしたい。
深く深く触れ合いたい。

「蓮、そろそろ次の仕事に移動するぞ」
「はい」
そう社さんに声を掛けられて、とりあえず移動前に・・・と携帯電話を取り出して着信を確認すると、そこには1件のメールが受信されていた。

『 10:47
From  ✉キョーコ
Subject お疲れ様です。

蓮兄お疲れ様です。
今日は何時くらいに仕事が終わりそうですか?
迷惑じゃなければ一緒に夕飯の買出しをしたいのですが・・・。
連絡待ってます。

お仕事、頑張ってください。

キョーコ。』


・・・・・キョーコ・・・?

おかしいと、そう感じた。
キョーコが自分から俺と買い物をしたいなんてそんなこと今まで言ったことなかった。
現に騒ぎになってからは俺に謝ってばかりで、外にだって出ようとしなかったのに。

胸騒ぎがしてリダイヤルからキョーコに電話をかけた。
「お、おい・・・蓮?もう時間・・・」
「すみません。すぐに終わりますから!」
「あ・・・ああ・・・」

RRRRRR・・・・
少しの呼び出し音の後、『はい』とキョーコが電話に出た。

「キョーコ?」
『はい。蓮兄、休憩中ですか?』
「うん・・・。キョーコは?」
『私も休み時間です』

普通の・・・声・・・。

「どう?学校は・・・」
『拍子抜けするくらい普通でしたよ』
「そう。よかった」
『はい。・・・心配、してました?』
「うん。すごく」
『大丈夫ですよ。モー子さんもいてくれますし』
「心強いね」
『はい。とても』

胸騒ぎがする。
キョーコの声は落ち着いてるのに。
落ち着いてるからこそ、恐怖心が湧き上がる。

背中にいやな汗が流れる。
お願いだからこの嫌な空気を消してくれないか・・・。

「・・・キョーコ・・・」
『はい』
「待ち合わせを、しようか」
『何時ごろ、終わりますか?』

手が・・・震える・・・。
声が震えそうになるのを必死で押さえ込む。
平常心だと自分に言い聞かせて声を出す。

「今日は6時には終わる予定だよ」
『じゃあ7時に駅前で待ち合わせなんてどうですか?』
「駅前?」
『あー・・・そんなところに蓮兄が来たら大騒ぎになってしまいますね』
「・・・」
『じゃあ私は駅前にいますので、近くに来たら連絡してください』
「ああ。わかった。なるべく明るいところにいて。7時といっても夜だから」
『大丈夫ですよ』
「キョーコ」
『・・・わかりました。気をつけて来て下さいね』
「うん。君もね」
『はい』
「じゃあ、またあとで」
『はい。・・・、あ・・・蓮兄!』
「ん?」
『蓮兄が一番食べたいもの、考えて来て下さいね?』
「・・・うん」
『いいですか?私が食べたいものでいいなんてセリフはいりませんからね?ちゃんと蓮兄が食べたいものを言ってくださいね』
「うん。わかったよ」
『じゃあ、お仕事頑張ってください』
「うん。キョーコも、勉強頑張って」
『はい』

ガチャリと電話を切ったのはキョーコだった。
俺は切られた携帯電話をたたむことさえ恐かった。

「・・・蓮・・・?」
「・・・・・」
「おい・・・?さっきのキョーコちゃんなんだろ?どうしたんだ?」
「・・・・いえ・・・・、なんでも・・・ありません・・・」
「・・・なんでもないって顔じゃないぞ・・・おまえ・・・」
「いえ・・・本当に・・・。ただ、夕食に俺の好きなものを作ってくれるそうです・・・」

―――なんでもない。

俺は社さんに言うフリをして自分に言い聞かせた。



***



椹先生に学校を辞めることを伝えた後、教室に戻る気さえせずそのまま帰ってきてしまった。
ただいまと言っても蓮兄は仕事中だから、おかえりと言ってくれる声はない。
この家に住むようになったはじめのころは誰もいない家に帰ることが恐かった。
蓮兄が帰ってくるまで、「キョーコ、ただいま」って言ってくれるまで私がここにいることを歓迎されてないかもしれないって不安でいっぱいだった。
いつからだろう。
当たり前のようにこの家に帰ってくることができるようになったのは。
「ただいま」も「おかえり」も普通に言えるようになったのは。

3年。
両親が亡くなってから、ひとつの場所にこんなに長くいたことなんてなかった。
知らなかったはずのこの部屋の天井も、今ではよく見知ったものになった。

カチャリと蓮兄の部屋のドアを開けると、そこには蓮兄の気配。
ベッドに寝転がり、シーツに包まるとなんだか蓮兄に抱きしめられてる間隔に陥る。
安心するにおい。
優しくて心地よくて。
蓮兄にぎゅっとされると恥ずかしいけどそれよりも嬉しくて。
きっと世界中の女の人がうらやむ立場に私はいる。
私は世間から見たらただの他人。
恋人でもなく、妹でもない。
「そりゃあ・・・問題にもなるわよね・・・」

―――最上はまだ高校生だし・・・やっぱり学校的にも高校生の女の子が血のつながらない男と一緒に暮らすのはどうかと・・・

椹先生の困った顔を思い出す。
血のつながり、そんなものがある人間なんて私にはもう誰もいないのに。

ふとベッドサイドに置いてある時計を見ると10時をまわったところだった。
学校に行ったはずなのに、こんな早くにまた家にいるなんて不思議。
体調も悪くないのに、なんだかサボったみたい。

学校を辞めたなんて言ったら蓮兄どんな顔するかな?
怒るかな?それとも悲しむ?
学費も蓮兄が出してくれていたから、本当はちゃんと卒業したかったけど・・・でも・・・気づいたら辞めるって言っていた。
言ったことを後悔なんてしていない。
だって私はここからまたはじめないといけないんだから。

今日が終わりで始まりの日。
私は蓮兄にメールを送った。
蓮兄、今日は記念日にするよ。
蓮兄の好きなもの作って、蓮兄とたくさん話をして。
蓮兄とちょっぴりだけどデートをしよう。
蓮兄にとってはデートじゃなくても、私にとっては立派なデートになるから。

最初で最後の、デートにしよう。

―――好きだよ。

うん。

私も、大好きだよ。

でも、

私たちの『好き』は意味が違うね。


私の『好き』は、こんなにも醜くて浅ましい。
こんなドロドロとした感情なんて早く消えて無くなればいいのに。

こんな私の感情は、言葉に出してはいけないものだ。









『キョーコ!?教室戻ってこなかったから心配してたけど、今どこにいるの!?』
「ごめんね、モー子さん。実は具合が悪くなって早退させてもらったの」
『大丈夫なの?あんた』
「うん。家に帰ってきたら大分よくなった。だから大丈夫だよ」
『んもーーー!ちゃんとメールなりなんなりで連絡よこしなさいよ!!!』
「うん、ごめんね」
『大丈夫ならいいのよ!じゃあ、これからまた授業だから切るわね。どうかあったらすぐに連絡するのよ!?』
「うん。ありがとう、モー子さん」

蓮兄と電話をした後、モー子さんからかかってきた電話に、退学したことがばれたのかと内心ひやっとした。
どうやら椹先生はモー子さんにもまだ話してはいないらしい。
・・・時間の問題なんだろうけど・・・。
ごめんね、モー子さん。
蓮兄に話してからじゃないとモー子さんには話せないんだ。
たくさん協力してもらったのに、こんな結果しか出せなくてごめんね。


蓮兄に話したら、パパとママにも話して。
謝っても許してもらえないだろうけど。
自分勝手でわがままで、ごめんなさい。

「ごめん」でいっぱいだ・・・私・・・。
情けなくて笑えてくる。


「さて、時間がいっぱいあるし、掃除と洗濯をしよう。天気もいいしシーツも干さなきゃ!」

蓮兄のベッドから勢いよく飛び起きて、窓を開けた。

新しい日々が、待っている気がした。



***



「社さん、お疲れ様でした!」
「うん、お疲れ。キョーコちゃんによろしくな」
「はい」

午後6時15分、仕事が終わった。
7時には充分間に合う時間だけど、外はもうすっかり暗くなっていて。
こんな中でキョーコを一人待たせるのは不安があり、社さんを送っていく時間はあったけど社さんとは現場で別れた。
時間きっかりに来るような子じゃないことは知っている。
キョーコと待ち合わせをしたことなんか今までなかったけど、きっと早く来て俺を待ってる。
あの子は自分では気づいてないけど、本当に可愛いから変な男に声を掛けられたりするかもしれない。
いや、俺以外の男があの子に近づくなんて冗談じゃない。
早く行かないと。

キョーコに電話をしてから、仕事中も不安で仕方なかった。
社さんに注意をされることはなかったから、仕事中俺の顔にはその不安は出ていなかったのだろう。
時間を延ばすわけにはいかなかったから必死で顔をつくってはいたけれど。

赤信号も少しの渋滞にも苛々する。
急いでいるときに限って信号にはまるのは、落ち着けと誰かが言っているんだろうか。
早くキョーコに会いたい。
この不安は杞憂なものだったって、そう俺にわからせてほしい。

6時55分。
ようやく待ち合わせの駅の近くまで着き、駅の入り口が見える路肩に車を停めた。
キョーコに連絡を・・・と駅のほうを見ながら携帯電話を取り出していると、視界にキョーコが入った。
・・・3人の男に囲まれているキョーコが・・・。

やっぱり・・・!!もっとはやく仕事を終わらせればよかった・・・!!!




6時30分。
ちょっと早いかなと思ったけど、駅の入り口付近で蓮兄を待っていた。
だって家にいてもなんだか落ち着かなくて、それに蓮兄もなんとなく早く来てくれるような気がしたから。

携帯電話を握り締めて道路を見る。
蓮兄はどっちから来るだろうか。
今日は何が食べたいかな。
いつもよりも多めに作っても食べてくれるだろうか。
きっと無理してでも全部食べてくれる。
だから心を込めてとびきりおいしいご飯を作ろう。

リダイヤルで蓮兄の名前を表示しながらそんなことを思っていると、ポンと肩を叩かれた。
え?と振り返るとそこには3人の知らない男の人たち。
「久しぶりだね」
「え?」
久しぶりって・・・この人たちに会ったことあったかな・・・??
「あの・・・人違いじゃ・・・?」
「えー?そうだっけー?まえに一緒に遊んだじゃん」
「いえ。やっぱり人違いですよ」
なに?この人たち・・・。ベタベタ触ってきて気持ち悪い・・・。
「まあ、この際人違いでもいいっしょ!君かわいいし一緒に遊びに行かない?」
「いいねえ!カラオケ行こうよ!カラオケ!」
「俺たちおごるし!さあ、行こう!!」
ぐいぐい両腕を引っ張る男たちに必死に抵抗するけど、身体はズルズルと引っ張られる。
「ちょ・・・!やめてください!離して!!」
やだ!
やだ!!

蓮兄!!!


「その手を離してもらおうか?」

そのとき振ってきた声に・・・一気に力が抜けた。
私を掴んでいた腕の力が緩まる。

「なんだよ・・・おまえ・・・」
「いってえな!離せよ!」

私を掴んでいた腕を、掴んで引き離してくれたのは・・・・。

「俺の大事な子なんでね。汚い手で触らないでもらおうか」

サングラスの奥で冷たく男たちを睨む。

「蓮兄・・・」

そして私はぐっと腕の中に引き寄せられた。


つづく






さあ次回はデートですかね・・・?←疑問系


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