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優しい時間 35

2010/07/21 Wed 00:31

お待ちくださった皆様、本当に本当にお待たせいたしましたm(__)m
34話をUPしたのは・・・・そうですか。5月でしたか・・・。
難産で、話を考えるのをまるっきり放棄していましたよ。
「続きを待ってます」とコメを頂けて、本当にうれしかったです(;;)

そんなこんなで、なんとか35話を書き上げました。
面白くなかったらすみません!(←先に謝っておくチキン野郎)

もう、多くは語るまい!

続きより「優しい時間 35」です!!!
どぞ!






世界は動く。
俺の世界は君と出会えてからずっと、加速する。



優しい時間 35



「よし、今日はここまで!お疲れさん!」
新開監督の声が響く。
俺はすうっと現実に戻る。
そのとたんに思い浮かぶのはキョーコのこと。
「お疲れ様でした!」
はやく家に帰らなければ!とその場で挨拶をして出口に向かう。
「おい!蓮!」
「っはい!?」
声を掛けられ、あわてて振り返ると、にっと口角を上げた新開監督がいた。
「気ぃつけて帰れよ。慌てて車とばして事故るまねはしないように!」
「はい」
監督に頭を下げて、スタジオを後にした。

「もしもし、社さん?今仕事終わりました。どうですか?キョーコは」
『うん・・・、まあ家にいることはいるんだけど・・・』
「けど?」
『・・・・・・なあ、蓮・・・』
「はい?」

―――キョーコちゃん、何に対してあんなに恐がっているんだろう?


何に対して・・・・・。

ごめんなさい、と何度聞いただろう。
泣きながらごめんなさいなんて、あの頃はそんなこと一度もなかった。
ありがとう蓮兄っていつだって笑ってた。
その笑顔に救われた。
その笑顔で、俺は俺になれた。

―――私、静かに生活したいの。こんなふうに騒がれてまで、この場所にいたくない。

苦しめているのはきっと俺自身。
でも、それでも君を手放したくなんてないんだ。
だって君は大切にしていてくれた。
俺との思い出をちゃんと大切にしていてくれた。
離れたくない。
離したくない。
きっとあれはキョーコの本音じゃないってわかってる。
いや、そう思いたいだけかもしれないけど・・・。
なんにせよ、俺の中に君を手放すという選択肢はどこにもないんだ。

『おい、蓮?』
「あ・・・はい・・・」
『オモテは記者がまだ張ってるぞ?お前、別のところに泊まるほうがいいんじゃないか?』
「そんなことしませんよ」
『でもなあ・・・』
「キョーコのところに帰らないと意味がないんです」
そう、意味がないんだ。
俺がよそに泊まったりすると、それだけでキョーコは自分のせいで迷惑を掛けたから、と思ってしまう。
そんな不安はこれ以上増やさせたくないんだ。
「それにキョーコと社さんを朝まで二人きりにしておくつもりはありませんよ」
『・・・それは俺を信用していないってことか?』
「違いますよ。あなたは世界一のマネージャーです。感謝してます。じゃあ、今から帰りますので」
『ああ。気をつけて帰って来いよ』

携帯電話を閉じて、車のエンジンを掛ける。
さあ、帰ろう。君の顔が見たいんだ。
君の声が聞きたいんだ。
どんな声でもちゃんと聞くから。
君の思っていること、ちゃんと知りたい。



***



コンコン。
「キョーコちゃん、蓮今から帰ってくるって」

あれからキョーコちゃんは閉じこもったままで、一度もあの部屋から出てきてくれない。
今も返事はない。

―――私の価値ってなんですか。

君が居るだけで蓮の均衡は保たれる。君が笑うだけで蓮は安心するんだ。
誰の他でもない、蓮にとって君は唯一。
他の誰にも君の代わりなんかできないんだよ。

静まった部屋は、まるで俺以外の誰もいないようで、キョーコちゃんは確実にここにいるのに、もしかして出て行ったんじゃ・・・とさえ感じてしまう。
キョーコちゃんがちゃんといるということを確かめたいけど、この部屋を開ける術を俺は持っていない。
鍵が開いてるのか閉じているのかすら確認できない。
それを確認できるのは蓮だけ。
このドアノブをまわすことができるのは蓮だけなんだ。


ガチャっと玄関の鍵が開く音がした。
俺は慌てて玄関に向かうと、そこには蓮がいた。
「すみません、社さん。キョーコ・・・」
「ちょっと外で話そう」
家の中ではキョーコちゃんに声が届く可能性があるから、俺は蓮を玄関の外に連れ出した。

「なあ、蓮。キョーコちゃんな、俺に言ったんだ。蓮に本当に大切な女性が現れたときに自分が邪魔になるって。足枷になりたくないって」
「そんなこと・・・」
「俺も言ったよ?蓮はキョーコちゃんのことをそんな風には思わないって。でもキョーコちゃん、全然聞いてくれないんだ・・・」
「・・・・・・」

俺の言葉なんかキョーコちゃんには全く届かない。
蓮しかだめなんだ。
あの子の闇を取り払えるのは蓮じゃないとだめなんだ。

「俺、帰るから。明日もまたここに来るよ。お前は明日もまた仕事だからな」
「すみません。ご迷惑をおかけします」
「・・・・蓮・・・」
「え?」
はーっとため息をつきながら蓮の肩にぽんと手をおく。
きょとんとした蓮の顔は、きょとんとしたときのキョーコちゃんとなぜか似ていると感じた。
「迷惑じゃない。キョーコちゃんにも言ったけど、俺はお前を最高の形で仕事をさせるためにやっていることだ。俺は迷惑なんて思ってない。それにすみませんじゃないだろう。ここはお疲れ様ですっていうところだ」
「お疲れ様です・・・?ありがとうございます、じゃなくて?」
「やるべきことをやったからだよ。そして明日も俺がするべきことをするだけだ。お前のマネージャーとしてね」
じゃあお疲れ、と言って俺は蓮のマンションを後にする。
あとは家族の問題だ。
明日になったら、明日ここに来たときには変化があったらいいな。
望むのはもちろんあの子の笑顔。

さあ、がんばれ。蓮。



***



社さんを見送った後、家の中に入ると、そこはしんと静まり返っていた。
キョーコの部屋をノックするけど、返答はない。
きっと眠っているんだろう。
扉一枚なのに大きな壁を感じる。

静かにドアを開け中に入ると、部屋は真っ暗だった。
廊下から漏れる明かりが、薄暗くキョーコの部屋を照らす。
「こんなところで寝て・・・」
キョーコはベッドを背もたれにして床に座って眠っていた。
泣きつかれたのだろう、目の下には赤くこすった跡。頬には涙の流れた跡が残っていた。
キョーコを起こさないように、ゆっくりとキョーコを抱きかかえベッドに横たえる。
そのときに、コツンと何かが落ちる音が聞こえた。
暗い中それを拾い上げると、それは久遠だった。

「これを握っていたのか・・・」
悲しみを吸い取らせていた・・・?
俺はここに居るのに、君は久遠にしか頼らない。
「石は・・・石だよ・・・」
どんなに君が問いかけても、石は応えてくれない。
石は抱きしめてくれないのに。

頬に触れると、涙でひんやりしている。
抱き上げても目を覚まさないキョーコは、本当に疲れているんだろう。
疲れているのは心のほう。
俺は君が居るだけでこんなに癒されるのに・・・。

「今日、監督に言われたよ。色を持ったって。君のおかげだ」
頬の涙を指で拭う。そのまま瞳に指を這わせると、そこにも涙がたまっていた。
愛しい愛しい女の子。
おでこに垂れる前髪を上げて、そこにキスをする。
君に初めてキスをしたのは、君に初めて会ったあの日。
小さくてふわふわの君の頬にキスをした。
いつのまにかおでこへのキスに変わって、それをするたびに君は笑顔に変わった。
お互いに兄弟が居ない俺たちはまるで本当の兄と妹だった。
俺の腕の中に平気で飛び込んできていたし、一緒にお風呂だって入ったこともある。
一緒に眠ったことだって数え切れないほどある。
それが当たり前だった。
これからもずっとこの関係が続いていくものだと思っていた。
兄として、妹としてお互いの未来をうれしく思って。
日々はそうして過ぎていくものだと思っていた。

あの日離れてしまってから、当たり前の日常は当たり前ではなくなって、俺たちも兄と妹なんかではなくなって。
当たり前だと思っていたあの日々は夢だったんじゃないかって思うようになった。
君を想うと胸が張り裂けそうだった。
会いたくて会いたくてたまらなくて、やっと君に会えたあの日、自分の気持ちがなんだったのかようやく気づいた。

ああ、これは好きだったんだと。

兄でもなく、妹でもなく。
ただ、一人の女の子として恋しく想っていたんだ。

でも、君と暮らし始めたときに今必要なのはそんな感情ではないことをわかっていたから、俺は兄として接することにした。
今は家族として愛そうと決めた。
安心して暮らせる家を君にあげたかったから。
だんだんと笑顔が増えていく君をみて、俺の選択は間違っていなかったと思った。

でももう限界なんだ。
だから君に好きだと伝えた。
家族としてでも、君は俺に壁をつくるから。
俺に嘘をつくから。
俺を守ろうとするから。

俺は守られたいんじゃない、守りたいんだ。
家族としてでも、君を愛する一人の男としてでも。

「好きだよ」
瞳にたまった涙を唇で拭う。

「好きだ」
濡れた頬にキスを送る。





キョーコ・・・君を・・・・

「誰よりも、愛してるよ」



そして、俺は初めて・・・



キョーコの唇にキスをした。





つづく







続くみたいです・・・(こんなところで終われるかーーーー!!!)

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