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優しい時間 19

2009/10/16 Fri 20:40

なんともむごい事件が起きました。


現場は我が家のとある一室。
そして、被害者は彼です。





かわいそうな彼


犯人は、ヤツです。

最近はわずかな隙間があればドアを開けるヤツ。
ただし、開けるのはトイレのドアのみ。

あまりにかわいそうな彼。
この姿になってすでに4日ほど経ちますが、・・・・・日に日に無残さが増すのはなぜだろう・・・。
こんな姿になっても、さらにヤツに痛めつけられている彼でございました。

では、本日は優しい時間の19話です。
・・・すすまんなあ・・・・(遠い目)




こんなに幸せなときがくるなんて思ってなかったの。



優しい時間 19



「キョーコ!おなべ吹いてる!!」
「ママ!それは弱火で!!」

初めて立つこの家のキッチンは、立て付けが高くてとても綺麗なものだった。
蓮兄はきっと料理をあまりしないのだろう。
でも、不思議と調理器具はそろっていて、もしかしたら蓮兄の彼女が置いていったのかもしれない。

「ふふ」
ママが隣で笑った。
笑うことなんて何もしていないのに、とママの方を見ると、私の視線に気づいたのかこっちを見たママと目が合った。
「こんな風にキョーコとお料理ができるなんて、夢みたいだわ」
とても綺麗な笑顔で、本当に嬉しそうにそう言ってくれたママ。
目頭がじんわりと熱くなる。

私もだよ。
もう叶わないと思ってた。
叶わない願いだと思ってた。
これは本当に現実世界なのかな?
目が覚めたら全部夢でしたってことにならないかな?

「ああ、キョーコ。泣かないで?」
ふわっと後ろから包まれたのは蓮兄の香り。
そこで私は涙を流していることに気づいた。
「母さん。料理しながらキョーコを泣かさないでください」
「なによ、蓮。失礼ね!んもう!男はキッチンに入らない!!今は私がキョーコを独占する時間なんだからね!!」
しっしっと手で蓮兄を払うようなマネをしたママ。
その動作がなんだかとてもくすぐったく感じた。

6~7人分の料理を作り(大食漢のパパにはとても足りないけれど)、4人でテーブルに着く。
「「「「いただきます」」」」
こうしてみんなでいただきますを言うのは、きっと両親が亡くなってから初めてのこと。
親戚の家では、そんなことなかったから。
嬉しくて料理を食べるのも忘れて、みんなの顔を見ていたらパパとママ、そして蓮兄が一緒に「おいしい」と言ってくれた。
「この味・・・キョーコ・・・」
「え?」
隣に座っている蓮兄が、私の顔を覗き込んだ。
そして次の瞬間、光が放たれているかのように輝く蓮兄の笑顔があった。
「これ、キョーコのお母さんの料理と同じ味がする」
「・・・え・・・?」
「うん。うまい」
パパも笑顔で頷いてくれた。
「キョーコ、ちゃんとお手伝いしていたものね。とってもなつかしい」
なつかしい?
お母さんの味?
「ほ・・・本当に・・・・?」
私ちゃんとお母さんの・・・・っ
「この味はもう食べれないんだろうなって思ってたから、嬉しいよ。ありがとう、キョーコ」
蓮兄が頭をワシワシと撫でてくれた。
私はもう、何も言えなくて。
ただただ、嬉しくて。もう胸がいっぱいだった。
お母さんと一緒にお料理をすることが大好きだった。
料理をする度に、お母さんの笑顔を思い出した。
それがとても辛くて。
お母さんの味を思い出しながら一生懸命作るけど、それが本当にお母さんの味なのか証明してくれる人はいなかった。
いつしか、そんな味は忘れてしまったのだと思っていた。
それなのに・・・やっと会えたこの人たちは、お母さんと同じ味だと言ってくれた。
「あ・・・ありがと・・・ございます・・・っ・・・嬉しい・・・・」
蓮兄に会ってから壊れてしまったこの涙腺は、とめどなく涙を流してくれる。
涙がたくさん流れて、少しひりひりするほっぺたも、これが現実なんだと教えてくれる。
ああ、ほらご飯が食べれないよ?と蓮兄が指で私の涙をぬぐってくれる。
それでも止まらない涙に、蓮兄は笑って自分の胸元に抱きしめてくれた。
「蓮!ずるいぞ!!キョーコ!パパのところに来なさい!!」
「何言ってるの!こういうときはママのところに来るのが常識です!!さあ、キョーコ!!」
そしてそんな二人に抵抗するかのように、蓮兄は私を抱きしめる腕に力を入れて強く抱きしめてくれた。
小さいころから安心する蓮兄の香りは、今も私を安心させてくれるものだった。

食事を終えて(ほとんどパパが食べたけど)、片づけをしてくれたパパと蓮兄がリビングに戻ってきた。
そしてソファに座ると、なぜか3人の顔がとても真剣な表情に変わった。
なんだろう?とドキドキしながら3人の顔を見つめる。
しんと静まる空気の中、話し出したのはパパだった。
「キョーコ。私とジュリは今日の最終便でアメリカに帰らなければいけない」
「・・・・・・・・・」
もう・・・帰るの・・・?
なんだか、また一人になってしまうような気がした。
「ああ、キョーコ。2人が帰っても、俺は一緒にいるからね」
蓮兄が私の様子に気づいたのか、慌ててそう言ってくれた。
蓮兄の言葉に頷いてから、私はまたパパの顔を見た。

「それで・・・な。キョーコ」
「はい」
「私とジュリと話し合ったんだが」
パパとママはお互いを見合わせ、こくんと頷いて、また私のほうを見た。

ドクンドクンドクン・・・
だんだん早くなる心臓。
なんだろう?よくないこと?私・・・

「キョーコ。私たちの養女にならないか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

きょとんとしてパパたちを眺める。
ヨウジョ・・・・・?
ヨウジョ・・・・・。
それってつまり・・・
「私たちはキョーコを本当の子供だと思ってきた。だけど、これからは戸籍上もキョーコを娘にしたいと思っている」

戸籍上も・・・。
パパとママが・・・本当に私の親になってくれる・・・?

「どう?キョーコ。こんな急いでいるときに言う言葉じゃないこともわかっているけれど、私たちあなたに目の前でOKを出してもらいたくて・・・」

どうって・・・・嬉しいに決まってる。
こんなにも大好きな2人が、親に・・・家族になってくれる・・・。
嬉しい。
嬉しい。

でも・・・・!

「・・・・さ・・・」
「え?」
「・・・ごめんなさい・・・」
「キョーコ・・・!!」
ママが悲しそうな声を出す。
本当は、はいって言いたい。
でも・・・でも・・・・!!

私はこんなだから。
もしも敦賀の姓に変わって、今度この人たちに迷惑を掛けてしまったら?
お父さんとお母さんみたいにまたいなくなってしまったら?
この人たちを信じていないわけじゃない。
でも、いつかこの人たちが去ってしまうことを考えないことはできない。
それならばこのままでもいい。

「ごめ・・・なさ・・・っ」

きっと色々考えて、そう言ってくれたパパとママ。
たくさん心配を掛けた。
忙しいのにこうやって日本まで来てくれた。
私を親戚の家から連れ出してくれた。
なのに私は何も応えることができない。

「やっぱり私、ここを・・・」
「出てなんて行かせないからね」
「え・・・」
私の言葉に被せるようにして蓮兄が私を見てそう言った。
「キョーコが養女にならないって言っても、俺たちはこれから一緒に住む家族なんだから。何も変わらない。父さんたちが言ってるのはただの戸籍上のことなんだから何も気にしなくていい」
「でも」
「でもじゃないよ。そんなことで簡単に君を手放せるほど、俺たちは軽い気持ちで君を探していたわけじゃない」
「・・・・蓮兄・・・」
私の手をぎゅっと握ってくれる。
大きくて・・・あったかい・・・。

「わかったよ。キョーコ。でも、これからも私たちをパパとママって呼んでくれるかい?」
「・・・呼んでも・・・いい・・・んですか・・・?」
パパたちの顔を見上げると、パパとママは、ふわりと笑ってくれた。
「あたりまえだろう?おまえは私たちの娘なんだから」

いいのかな。
こんなにたくさん幸せ・・・もらっていいのかな・・・。
お父さん。お母さん。私ね・・・今すごく幸せで、怖いくらい幸せで。

不安だけが大きくなるの。


***


アメリカへの最終便に間に合わせるために、父と母は先に俺の家を出た。
またね、と二人ともキョーコの頬にキスを残して。
寂しそうに両親の後姿を見送ったキョーコ。
これから俺も仕事に行かなければいけないことが残念で仕方がない。
今日くらいずっと一緒にいたかった。
「キョーコ。本当は君を一人にしたくはないけど・・・俺もこれから仕事なんだ」
「はい。行ってらっしゃい・・・」
「うん・・・」
俺の顔を見つめてまた寂しそうな顔をするキョーコ。
ああ、本当に仕事に行きたくない。

「そうだ。キョーコ」
「え?」
俺は、自分のポケットから取り出したものをキョーコの前に差し出す。
「これ。君が持っていて?」
「・・・・・っ・・・これ・・・コーン・・・」
びっくりした表情をしたキョーコはあせったように声を出した。
「私・・・これ、蓮兄に返すために・・・っ」
「うん。でもこれはキョーコが持っていて?」
君が持っていてこそのこの石。
「っ・・・だめです・・・っ」
「どうして?」
「これは蓮兄に持っていて欲しいんです!だってコレ、護ってくれるでしょう!?」
「うん。だからキョーコに持っていて欲しいんだ」
「ダメです!!私にはコーンを持っている資格はないから、だから蓮兄に返します!!」
「・・・資格?」
資格ってなんだ・・・?
そんなもの何も・・・・。
「私・・・今度は蓮兄を護ってほしい・・・」
「俺は大丈夫だよ」
「お願い!蓮兄!!」
「・・・キョーコ?」
俺の腕をぎゅっと掴んで、必死な様子で俺に言い募るキョーコ。
一体・・・どうしたっていうんだ・・・?

「お願い・・・」
「キョーコ・・・?聞かせて・・・?持つ資格がないってどういうこと・・・?」
「・・・・・・・・お願い・・・」
「キョーコ。理由を聞かなくちゃわからないよ。俺はね、これからは俺が君を護るつもりだけど、24時間一緒にいることはできないから、せめて俺がそばにいないときだけでも久遠に護ってほしいと思ってるんだ。もちろん、久遠は石だからほんの気休めにしかならないのはわかっているけど」
「・・・気休めじゃないです。コーンは本当に私を護ってくれました・・・」
「なら、なおのこと・・・」
「ダメなんです!!私、コーンに護ってもらったのに、それなのに最低なこと考えた!!」
「最低なこと・・・?」
「・・・っ私・・・っ・・・コーンが無ければよかったって・・・」
「無ければ?」
「コーンがそばにいなかったら・・・私は一人にならずにすんだのにって・・・」
「・・・・・・」
「お父さんとお母さんと一緒にいれたのにって・・・・っ」
「キョーコ!!」
「・・・っ」
キョーコが辛そうな顔で、泣きそうな顔でそんなことを言うから、俺は無意識のうちにキョーコを抱きしめていた。

「わ・・・私・・・コーンがいつだってそばにいてくれたのに・・・何度も手放そうと思ったんです・・・。でも、これは蓮兄からの預かり物だから、ちゃんと返さなくちゃって。私はもう充分護ってもらったから、今度は蓮兄を護ってくれるように・・・。だから・・・蓮兄が持っていてください・・・。お仕事で危険な目にあわないように・・・。お願いします。蓮兄・・・」
「ダメだ。久遠はキョーコが持っていなさい」
「蓮兄!!」
「俺は誰がなんと言おうと、キョーコが生きていたことが嬉しいよ。キョーコのご両親だってきっと喜んでる」
「・・・・・・・・」
「君を一人にしたのは、あのときに君を探し出せなかった俺のせいだ」
「!!そんなこと・・・!!」
もっと違う方法があったのかもしれない。そしたらこんなに長いことキョーコを悲しませることも無かっただろうに。
「もう絶対君を一人にしないと約束するから、だから俺を安心させるために、コレを持っていて?俺は感謝してるんだ。久遠に。君を護ってくれたご両親に。だから、これは俺のわがまま。ね?キョーコ」
「私・・・」
「君がいてくれてよかった」
「蓮兄・・・」
「明日もあさってもずっとずっとそばにいるよ」
明日もあさってもずっとずっと。
そばにいたいのは俺のほう。

俺は、キョーコの小さな手に、俺の分身を再び握らせた。

それをゆっくりとキョーコが握り締めてくれたのを確認して、もう一度キョーコを抱きしめた。



つづく






・・・私の書くお話は1話1話が長いですね。(だから自分でも読み返しに気が遠くなるのか・・・orz)
もう少し簡潔にかつ、話内の時間をスピーディに動かす力をつけたいものです・・・ああ・・・orz


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