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声が聞きたい

2009/02/08 Sun 01:12

今回も短編でございます。
短編というか・・・だらだらとなりがちな私の短編。
なりがちっていうか、まあなってんですけど。
起承転結を知らない人間です。




声が聞きたい


やっぱり自分の部屋に帰ればよかった・・・
そう思ったのは恋人の部屋に泊まりにきた夜。
泊まりに来たといっても、この部屋には今自分しかいない。
この部屋の主は海外へ長期のロケに行ってしまっている。
ロケに行って2ヶ月が経った。
お互いありがたいことに仕事は忙しく、海外で時差もあるためほとんど電話をすることはできない。
それでもおはようとおやすみのメールは欠かさない。
「あと1ヶ月・・・・逢いたいです・・・敦賀さん・・・」
淋しくてどうしようもなくて、蓮からプレゼントされていた合鍵を使って蓮の部屋に泊まりに来た。
まだ2人の付き合いは世間に公表していないから、キョーコはマスコミを気にして合鍵を使ったことは片手で数える程度しかない。
それでも、今日は自分を抑えられなかった。
たまたま事務所で見たTVで、以前収録した蓮の対談が流れていた。
笑顔で質問に答えていく彼に、その声にキョーコは見入ってしまった。
なんで今ここに彼はいないんだろう。
子供みたいにわがままが自分の中に広がっていった。
そんなこと思ってはいけないことはちゃんと理解しているはずなのに・・・。
だからせめて蓮の気配があるところに行きたかった。
蓮の部屋に入ると、しんとした中にもやはり蓮の気配はあって。
蓮のベッドにもぐりこむと優しい香りがした。
・・・敦賀さんに包まれてるみたい・・・

でも、シーツは冷たくて、いつも温めてくれる存在はいない。
ちょっとでも離れると自分の身体を引き寄せてくれる腕がない。
せっかくここに来たのに・・・
来なければよかった。
我慢して自分の部屋に帰ればよかった。
そしたら敦賀さんがいないことを確認しないですんだのに。
おやすみのメールに返事はない。
仕事・・・忙しいのかな・・・
敦賀さん・・・今あなたは私のこと少しでも思ってくれていますか?
役に入り込んでいるときも、ほんの少しでいいから・・・・・
「・・・何考えてるの・・・サイテーだ・・・」

淋しくて、苦しくて・・・
あなたを好きになって醜い私がどんどん増えていくの。
理不尽にあなたをせめる私がいるの。
はやく帰ってきて。声を聞かせて。ぎゅっと強く抱きしめて・・・
もうどうしようもなくて、この部屋にいることに辛さを感じた。
「・・・・・・・帰ろう」
ベッドを出て洋服に着替える。コートを着てバッグを持とうとした瞬間・・・・

電話のコール音が鳴った。

それはキョーコの携帯電話ではなく、蓮の部屋専用の電話で・・・
「・・・なんだ・・・期待しちゃったじゃない・・・」
蓮の部屋の電話に勝手にキョーコが出るわけにはいかない。
どこからどんなふうに秘密がバレルかわからないから。
そのうち留守電に切り替わるだろうと、キョーコはバックを持ちリビングを出て行く。
靴を履いているときに電話は留守電に切り替わった。
『キョーコ』
留守電専用の女性の無機質な対応音の後に聞こえたのは、キョーコが一番聞きたかった声。
『キョーコ・・・キョーコ?いないの?』
聞き間違いではない、確かに蓮の声だった。
慌てて履きかけた靴を脱ぎ捨てて電話のもとに行く。
待って、いるの!!私はここに居る!!
「蓮!!」
受話器をとった瞬間、キョーコは叫んでいた。
『・・・キョーコ・・・?』
「はい・・・そうです・・・」
『・・・びっくりした・・・本当にいるとは思わなかった・・・』
ああ・・・敦賀さんの声だ・・・。
『なんとなくね、今キョーコが俺の部屋にいるような気がしたんだ』
「うん・・・う・・・ん・・・」
優しい声・・・
なんて現金な私の心・・・。声を聞いただけでこんなに軽くなる。
『キョーコ・・・泣いてるの・・・?』
「・・・・嬉しいんです・・・。敦賀さんと話せて・・・」
『俺も嬉しいよ。キョーコの声が聞けて。キョーコがそこに居てくれて』
「あ・・・りがとう・・・ございます・・・」
『あと1ヶ月・・・なるべく早く終わらせて、まっすぐにキョーコのところに帰るから。ねえ、キョーコ?我慢しなくていいからね?時間なんて気にせずに電話だってしていいんだ。君のためなら時間はいくらでも割くよ?』
「くす・・・だめですよ。ちゃんとご飯食べてちゃんと眠ってください。」
『ん・・・でも、やっぱり君のそばにいるほうがよっぽど休まるよ』
「それは・・・・・私も・・・です・・・」
『はやく・・・抱きしめたいな・・・君を・・・』
「はやく・・・抱きしめてください・・・」

帰ってきたら抱きしめてキスして・・・おいしいご飯を食べてもらわないと。
そのときはここであなたを迎えれたらいいな・・・

『キョーコ?目途がついたらすぐに連絡するから、もしできたら俺の部屋に居て?そしてさっきみたいに名前で呼んでくれたら・・・嬉しい・・・』
「え・・・・?」
さっき・・・?名前・・・?
キョーコが疑問に思っていることを電話の向こうで察した蓮は、くすりと笑った。
『さっき呼んでくれただろう?蓮って・・・』
「・・・・・・・・・・・ええ!!」
『ね?それを楽しみに仕事頑張るから。まあ、3か月分たっぷりキョーコを堪能させてもらうつもりだから覚悟しててね?』
「んなっ///覚悟って・・・っ///」
『よろしく。キョーコ』
顔は見えなくても、今きっと蓮は満面の笑みをしているに違いない。
「は・・・・はい・・・///」
『じゃあ、おやすみ。キョーコ。愛してるよ』
「・・・おやすみなさい。・・・・・・・・・・・・・・・蓮」
恥ずかしくて名前を呼んだ後すぐに電話を切ってしまった。
受話器を置き、そのまま蓮のベッドに飛び込んだ。
「蓮・・・蓮・・・蓮・・・」
何度も彼の名前をよぶと、嬉しそうな彼が目に浮かんでくる。
仕事頑張るから、ちゃんと我慢するから。
だから機械越しではないあなたの声を聞かせてね。
「おやすみなさい、蓮・・・」
そう言って、キョーコは静かに目を閉じた。





「おーい、れーん・・・・・・・キョーコちゃんか・・・」
「・・・なんでわかるんですか・・・」
「なんでって・・・おまえ、顔真っ赤だぞ?」
ニタニタと社さんが笑っている。
だって、仕方ないでしょう?
電話切り際に呼ばれた名前。
たった一言に俺の心は一気に浮上する。
・・・もう・・・今すぐ帰りたい・・・
「蓮、そろそろ出番みたいだぞ」
「・・・はい。さっさと終わらせましょう!!」
グッと気合を入れて、1分でも1秒でも早く君のもとに帰ろう。
そして、君のかわいい声を機械越しではなく耳元で聞かせて。

それだけできっと俺は世界で一番幸せになる。

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