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幸せのカタチ 11

2009/01/31 Sat 09:54

「栄養失調と睡眠不足ですね。いわゆる過労でしょう。彼女よほど無理をしていたんじゃないですか?」
医師がそう説明してくれた。
キョーコの細い腕には点滴が繋がっていて。
あんなにも健康にうるさかった君が・・・こうしてしまったのは全部俺のせいなんだね。

キョーコが倒れたことを連絡すると、社長・マリアちゃん・琴南さん・だるまやのご夫婦・椹主任が駆けつけた。
そのときに、俺は彼女の状態と、俺の記憶が戻ったことを伝えた。
みんな喜んでくれたけど、琴南さんには「今度この子のことを忘れたら殺してやる」と脅された。
そして、社長には「ちゃんと最上くんをつかまえておけよ。」と。


点滴が終わった後、キョーコを俺の部屋に連れ帰り、俺のベッドにゆっくりと寝かせた。
彼女と二人きりになって彼女の右手にコーンを握らせ、左手に俺の手を重ねた。
はやく、はやく目を覚まして・・・?
俺に君の笑顔を見せてくれないか・・・・。
上着のポケットからロックが掛かったままの携帯電話を取り出す。
暗証番号は1225。キョーコの誕生日。
「こんな大切なことまで・・・俺は本当に・・・」
自分のふがいなさにほとほと厭きれる。
携帯を操作し、メールの送受信BOXを開く。そこにはたくさんのキョーコとのやり取り。
―――今日は何時ごろ上がりますか?
―――ちゃんとお昼ご飯たべてくださいね。
―――またそんなこと言って。怒りますよ。
―――・・・わたしも好きですよ・・・・?

そして、彼女と撮ったたくさんの写真・・・

ああ・・・はやく目を開けてくれないか・・・?
はやく謝らせて。そして、君を抱きしめさせて。
もう二度と君を忘れないと約束するから・・・。

「キョーコ・・・」


******

真っ暗・・・ここはどこ・・・?
嫌だ、誰もいない・・・誰か!!
お母さん!!ショーちゃん!!
どうして!?どうして誰もいないの!?
どうして私をおいて行っちゃうの?
私が悪い子だから?いい子にするよ私。誰にも迷惑かけないから。
だから、ねえ。お願い。独りにしないで。
コーン?コーンもいない。どこに行ったの?どこかに落としたの?
それとも・・・

あ、そうか・・・やっぱり私が悪いんだ。
だから皆いなくなっちゃうのね。お母さんもショーちゃんもコーンも。
きっと私の傍にいたら皆に悪いことが起こるから。
だから、皆が私のところから居なくなるのは当たり前のことなんだ。
ごめんね。
私のせいであなたにも悪いことをしてしまった。
ごめんね。ごめんね・・・。
久遠――――・・・・・

目を開けると、薄暗い部屋の中だった。明け方なのか、それとも日が沈んだばかりなのか・・・カーテンの閉められた窓は薄暗い光が射し込んでいた。
見上げた天井は・・・見覚えのあるもので・・・
ここは・・・彼の部屋・・・?
どうして私・・・ここに・・・?
自分の左手が温かい。ふとそちらを見れば、見覚えのある寝顔。
「・・・久遠・・・」
手を握ったまま、床に座った状態で眠っている。
私・・・撮影所を飛び出した後の記憶がない・・・。もしかして倒れたのかしら・・・・。
ずっと・・・そばにいてくれたの・・・?
あなたは忙しい人なのに・・・。また私は迷惑をかけたのね。
そして、右手には・・・コーンが・・・。
・・・もう、充分です。
私は幸せでした。
あなたにたくさんの幸せを貰ったから・・・。
私は、不幸以外の何も与えられなくてごめんなさい。
でも、これからはコーンが・・・昔あなたに貰ったこの青い石が、きっとあなたを守ってくれるから。

私の左手を握っていた彼の手をゆっくりと離し、代わりにコーンを握らせた。
そっとベッドから降り、掛けてあったコートを羽織る。
やすらかで、きれいな寝顔。
「久遠・・・愛しているわ・・・。幸せになって・・・・。」
誰よりも幸せになって。
私はそれを強く強く願うから。
コーン。この人を悲しみから、つらいことから守ってあげてね。
頑張りすぎるひとだから、どうかどうか・・・彼に・・・

彼のきれいな髪をなでようとした瞬間、腕を掴まれた。
「!!」
久遠の目が、私を見つめていた・・・。
「目が・・・覚めたんだね。キョーコ・・・よかった・・・」
「え・・・・・」
彼は・・・キョーコと言った・・・?
「君を忘れてしまってごめん。つらい思いをさせて、ごめん・・・・」
久遠が私の身体を引き寄せようとする。
いけない!
「だめ・・・。」
「キョーコ?」
「忘れてなんかいません!!私たちはもとから何の関係もありません!!」
「キョーコ!!」
今この人に抱きしめられたら、私は動けなくなる。
腕を彼の胸に押し当て、必死で拒む。
「ご迷惑をお掛けしてしまって申し訳ありません。もう大丈夫ですので失礼させていただきます」
私は本気だと、怖くてたまらなかったけどまっすぐに彼の目を見てそう言った。
はやく解放してほしい。
掴まれたままの腕が熱い。

「・・・どうして・・・そんなことを・・・言う・・・?」
じっと見つめていると、彼が表情を変えた。
今にも泣きそうな・・・初めて見る顔・・・
「何の関係もないなんて・・・。それとも本当に俺の思い違いなのか?」
「・・・・・っそ・・・」
そのとおりです、と言わなければいけないのに・・・・・
久遠の涙を見て・・・・・言えなかった・・・。
この人は・・・こんなに弱かったの?

「だめなんです。どうして・・・どうして思い出したんですか?忘れていたほうがあなたは幸せなのに・・・」
久遠の頬の涙を両手の親指で拭き取ろうとするのに、涙が次々にこぼれていく。
「どういう意味だ?キョーコ」
「私はあなたを不幸にする存在なの」
「そんなことはない。君がいない未来なんて幸せでもなんでもないよ」
私の両手の上に彼が手を重ねる。
私の手なんかすっぽりと隠れてしまう大きな手。
大好きだけど、失くしたくない大切なものだけど、私のところにあってはいけない。
ゆっくりと私は腕をおろした。
そして今言わなければいけないこと。
私は大きく静かに息を吸い込む。
「敦賀さん。別れましょう?」
「な・・・っ」

さっと顔色を変えた久遠に思い切り抱きしめられた。
痛いくらいに。
「嫌だ!!絶対に嫌だ!!ちゃんとした理由を教えてくれ!!君を忘れてしまったことならどんなことをしてでも償うから!!」
「だって!お母さんもショーちゃんも私の前からいなくなった!!私がいけない子だから!!そしてあなたも私を忘れた!!」
「だから・・・」
「違う!!償いなんかいらないんです。あなたは何も悪くない。私の傍に居たら不幸になるから皆離れていった。それが当たり前だから。私の周りには誰も残らない。残ってはいけない!!だから、私がいなくなるの。それが一番いい!!」
久遠の腕の中から抜け出そうと必死でもがくけど、久遠は力を緩めるどころか、いっそう強く抱きしめてきた。
「俺の記憶がなくなったのは君のせいじゃないよ、キョーコ。」
「は、離してください!」
「離したら君はどこかに行ってしまうんだろう?」
「私はあなたの傍にいてはいけないんです!」
抱きしめたまま、彼はゆっくりと頭をなでてくれた。小さい子をあやすように・・・。
「敦賀さん・・・っ」
「・・・久遠だよ。キョーコ・・・君を愛してる。」
「・・・・・」
「俺はね、キョーコ。君のことを忘れていたときも、君のことが気になって仕方なかったんだ。だからきっと・・・いや、絶対また君を好きになったはずだよ?」
「・・・・っ」
「俺、思うんだけど事故のときキョーコのことばっかり考えていたからキョーコのことだけ忘れちゃったんじゃないかな。もしもキョーコがいなくなっても、どんなことをしてでも君を探し出す。俺も、君の周りにいる人も皆ね」
どうして・・・そんな嬉しいことを言ってくれるの?
私はここにいてもいいの?
あなたの・・大好きな人たちのそばにいても・・・いいの・・・?
「・・・ばかですね・・・。私から離れられるチャンスだったのに・・・。」
「そんなものはいらないよ。俺が未来で証明してあげる。君といて幸せな俺をたくさん見せてあげる。」
彼の腕の力が緩まり、見上げたら嬉しそうに微笑んだ久遠がいた。
ああ、もう離れられない。この人を失いたくなんてない・・・。
「わ・・・私も・・・愛してます・・・。あなたと・・・幸せに・・・んっ」
久遠に唇をふさがれた。全てを奪い去るような口づけで、でもとても優しくて・・・。
嬉しくて、お互いに貪った。
「ん・・・はぁ・・・っ」
「キョーコ・・・」
ゆっくりと目を開けると、キレイな久遠の瞳にまっすぐに見つめられていた。
「二度と君を忘れないと誓うよ。ずっとずっと一緒にいよう?君と一緒なら俺はいくらでも幸せになれる。」
「・・・・っはい・・・っ」

もう離れることなんてできない。
だから、私の精一杯であなたのそばであなたを守ります。

幸せに・・・幸せに・・・幸せに・・・・・・

Fin

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