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幸せのカタチ 10

2009/01/30 Fri 11:22

着替えとメイクが終わってスタジオに向かうと、そこにはもう敦賀さんがいた。
敦賀さんは私のほうを見て、少しだけ微笑んだ。
なぜ?そんな顔をしてくれるの?私なんかに笑顔をくれるの・・・?
「さ、二人ともセットの中に入って。」
新開監督が声をかける。
「京子ちゃん。行こうか。」
「・・・はい。」
優しい・・・声・・・だった・・・。


「CMのコンセプトは恋人同士の記念日。彼氏から彼女への記念日のプレゼントであるダイアモンドのネックレスを渡す-----というものだ。二人には蜜月のような恋人を演じて欲しい。こちらからは特にこうして欲しいとは言わない。二人の思う恋人同士を演じてくれ。声まで録らないからどんなことを話してもいい。スタートは言わない。俺のタイミングで撮っていく。」
蜜月って・・・・。
この人相手に・・・?
「わかりました。」そう言ったのは敦賀さん。
「頑張ろうね。京子ちゃん。全力でいくから。」
「・・・・はい・・・」
背中に汗が流れるのがわかった。

セットの中にある赤い大きなソファに敦賀さんが座る。
「おいで。」と両手を広げて私を待つ。
私は目を閉じて大きく静かに息を吸った。
私が目を開けたとき、目の前にいるのは・・・・・・私が愛している男性。
久遠・・・・・。
今だけ。今だけ・・・私を覚えていたあなたといる夢を私に見せて・・・・・。
そして、ゆっくりと・・・目を開けた。

私は、久遠の腕の中に飛び込む。
あったかくて大きくて、私を安心させえくれる久遠の腕の中。
そして、久遠の香り。
ふと見上げれば久遠の優しい笑顔。
ああ・・・久遠だ。私の大好きな・・・。
顔を見たとたん涙が溢れてくる。大好きな笑顔がかすむ。泣きたくない。もっと顔を見ていたいのに・・・。
彼の手が優しく私の頬を包んだ。彼の指が濡れた私の頬を拭ってくれた。
ゆっくりと彼の顔が近づいてきて、唇が触れた。
優しくて、心地よい彼の口付け。
このまま時が止まればいいのに・・・・。

でも、
「京子・・・」
そう彼が声を出したとたん、私は現実に戻された。
この人は確かに言った。
「京子」と。
やっぱりこの人は久遠じゃない・・・!
久遠は私を京子とは呼ばない。
ああ、もう・・・自分の身勝手な感情に吐き気がする・・・!
もう一度彼が私のからだを引き寄せようとしたときに、とっさに手を彼の胸を押して拒んでしまった。
「・・・京子・・・?」
どんなに自分に言い聞かせても、自分の心に嘘をついても、溢れる気持ちは止めようがないのに。
どうしてあなたは私を忘れてしまったの?
どうして私はあなたを不幸にしてしまうの?
どうして私は・・・・・生まれてきてしまったの・・・・・?

「ごめ・・・・なさ・・・っ」
「京子・・・ちゃん・・・?」
「ちが・・・っわ・・・私・・・京子じゃ・・・」
「京子ちゃん・・・?」
「違う・・・違うんです・・・私・・・。ごめんなさい・・・私・・・。ごめんなさい・・・この仕事・・・降ろしてください・・・」
何もかも、最低だ・・・。

*********

彼女の身体を抱きしめたとき、痩せたと思ってしまった。
なぜそう思ったのか。もともと細い体つきの彼女。俺は彼女を抱きしめた記憶なんかないのに。
ますます細くなったと感じる身体を抱きしめて、胸が痛くなった。
彼女を腕の中に閉じ込めて、首もとに顔をうずめ、胸いっぱいに彼女の香りを吸い込む。
安心できる彼女の温もり、香り・・・。
顔を覗き込むと、愛しくて思わず顔が緩んでいくのがわかった。
それと同時に彼女も笑顔になり、そして彼女の瞳には涙が溢れた。
それは、その表情は俺に向けられたもの・・・?
そうだったらいいのに・・・。
溢れて頬を伝った涙を指で拭い去る。
愛しくて愛しくて、俺は彼女を引き寄せ唇を奪った。
軽く触れるそれはとても甘美で・・・。とても心地よくて、このまま時が止まればいいと思った。
それなのに、
「京子」と名前を呼んだとたん、彼女の空気が変わったのを感じた。
目を見開き、顔色を変える。
もう一度抱きしめようとしたら、彼女は俺の胸を押して抵抗した。
悲痛な顔で、目からは涙が流れている。
「京子・・・?」
もう一度呼ぶと小さな声が聞こえた。

「ごめ・・・・なさ・・・っ」
「京子・・・ちゃん・・・?」
「ちが・・・っわ・・・私・・・京子じゃ・・・」
混乱しているようなそんな声・・・。
「京子ちゃん・・・?」
「違う・・・違うんです・・・私・・・。ごめんなさい・・・私・・・。ごめんなさい・・・この仕事・・・降ろしてください・・・」

そう言って、彼女は俺の腕の中から飛び出して行った。
監督に必死に謝った後、スタジオを出て行った。
きっと今彼女を逃がしたら、俺はもう彼女を捕まえられない。そんな気がした。
スタジオの廊下を走る彼女を追いかける。
「待って!」
彼女は止まらない。自分の控え室に飛び込み、閉めようとしたドアに足を入れて無理やり留めた。
「出て行ってください!」
そう叫ぶ彼女を、俺は抱きしめた。
「いや!離して!」
「離さない。」
「離してください!」
「嫌だ!!」
俺は彼女を抱く力を更に込めた。絶対に離さない。
ぐっと彼女の身体を自分の身体に押し付けていると、突然彼女の足から力が抜けたようにずり落ちた。
慌てて彼女の身体を支える。
「・・・京子ちゃん・・・?」
顔を覗き込むと瞳が硬く閉じられて、全体重が蓮にもたれかかっていた。
「っ京子?京子!!」
「蓮!!」
社さんが部屋に飛び込んできた。
「キョーコちゃんっ!!蓮っどうしたんだ!?」
「わかりません!急に意識を失って・・・っ」
「救急車・・・いや、タクシーで病院まで行ったほうが早いだろう!蓮キョーコちゃんを連れて行くぞ!!」
「はいっ!」
彼女を抱き上げ、部屋を出ようとした時だった。ふと視界の片隅に彼女のものだろうバックからこぼれた小さながま口財布が見えた。そのがま口は開いていて、そこから見えているもの。それは・・・。
「これ・・・。」
それを手に取る。

----------あなた妖精?私キョーコっていうの。・・・もう会えないの・・・?

「あ・・・・・。」
腕の中にいるのは・・・・。
「蓮!!早く!!」
俺が・・・世界で誰よりも愛する・・・・・・

タクシーに乗って病院へ向かう。
その間もずっと彼女を抱きしめる腕はゆるめないまま。
「蓮・・・・・」
「社さん・・・・」
「ん・・・?」
「俺・・・思い出しました。」
「え・・・・」

全て思い出した。
この子は俺のたった一人の女の子。
「--------キョーコ・・・」

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