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幸せのカタチ 7

2009/01/25 Sun 12:47

「敦賀さんとの共演?」
椹さんから仕事の説明があった。
断りたかったが、もう依頼にOKの返事をしてしまったとのことだった。
監督は新開監督で、どうしても私を使いたいというありがたいものだった。

精一杯演技しなくちゃ。
敦賀蓮との仕事だもの。
悔いを残さないように。

椹さんと別れて事務所の廊下を歩いていると、正面から敦賀さんと社さんが歩いてきていた。
あの病院のあと、はじめて見る敦賀さん。
どうしよう。
気づかないふりをして引き返すべき?
胸が高鳴る。
握り締めた両手が汗ばんでいるのがわかる。
お願い。気づかないで。

挨拶だけしてはやく消えなきゃ!
すれ違う瞬間、「こんにちは」と声だけ出した。
「あ・・・」と社さんの声は聞こえたけど、それには気づかないふりをした。
はやく!はやくこの場から離れなきゃ!!
撮影のときはちゃんと覚悟を決めるから。
今はまだ心の準備が出来ていないんです。
私のことを知らないあなたを見るのはつらいんです。

なのに、
「京子さん」
私を呼び止めたのは・・・・敦賀さんだった・・・・・・・。

ドクン・・・・
鼓動が大きく響いた。
今のは・・・私の聞き間違い・・・・・?

「京子さん。少し話をしたいんですけど、お時間はありませんか?」
それはずっと聞きたかった彼の声で・・・。
「え・・・?」
思わず彼の顔を見てしまった。
彼の真剣な顔を・・・。

逃げなきゃ・・・そう思っているのに、彼の顔を見てしまったら、動けなくなって。
でも、彼は「京子さん」と言った。
そのことを思い出した瞬間、私の知る彼ではないことを確認させられた気がして・・・
「私はお話しすることはありません。」
そう・・・伝えて、走り出していた。

いいんです。
なんて礼儀を知らない女なんだろう。
そう、私の存在を否定してください。
敦賀蓮の中に最上キョーコとしても京子としても存在しないように。
少しの隙間も作らないで。
あなたの中から抹消してください――――


*********


彼女と話しをしたかった。
あのドラマで演技をしていた俺は明らかに違う俺だった。
誰かを愛することを知った表情。
本当に俺なのだろうか。
そして、そのドラマに出ていたのは憎悪をまとった美緒の存在。
外観も雰囲気も違うのに、なぜか一目見てこの子は病室にいたあの子だとわかってしまった。
共演すらしているのに、彼女のことを覚えていないなんて絶対におかしい。
きっと彼女のことを知ることができればこのモヤモヤ感が晴れるような気がする。

彼女に会いたい。
そう思った。
社さんに彼女に会うにはどうしたらいいのか相談すると、彼女は同じLME所属らしく今の時間に事務所に行けば会えるはずと時間を調節してくれた。
彼女に会いたいと言ったときの社さんの表情は心成しか嬉しそうに見えた。

そして、社さんの言ったように、彼女と会うことができた。
事務所の廊下で。
彼女を見たとたん、心臓が高鳴りはじめた。
緊張しているのだろうか、握り締めた両手が汗ばんでいるのがわかる。
話しかけようとした瞬間、彼女は小さな声で「こんにちは」と言ったとたん逃げるように俺のそばから去ろうとした。
居なくなる!
そう思った瞬間、「京子さん」と話しかけていた。
びくっと立ち止まった彼女に、話がしたいことを告げると彼女は俺と目を合わせてくれた。
それはとてもつらそうな瞳で・・・・。

でも次の瞬間、彼女がつぶやいたのは
「私はお話しすることは何もありません。」
と、はっきり拒絶とも思える言葉だった。

去っていく彼女の小さな背中を見送ることしかできなかった。
俺の中に残ったのは真っ黒な穴。

「社さん・・・・」
「ん・・・?なんだ蓮・・・」
「俺・・・事故に遭う前、彼女に嫌われていたんですか・・・・?」
社さんはしばし考えていた。
きっと、言葉を選んでいるんだろう。
でもそのしぐさで、ああ俺は彼女に嫌われていたんだろうと。
俺のことを嫌いな人間にあえて好きになってもらいたいとは思わない。
それでも、なぜか諦めきれない自分が居た。
彼女に俺を見て欲しいと・・・・。
だから、彼女とのCM撮影の仕事が入ったと聞いてとても嬉しかったんだ。

「蓮。キョーコちゃんはお前を嫌ったりしてないよ。」
「そう・・・ですか・・・。じゃあ、おれが彼女を忘れてしまったから怒ってるのかな・・・」
「・・・・・・・」
怒っている・・・という感情とは違うような気もする。
つらそうな顔してた。
きっと俺のせい。
・・・・・・・・・だったら・・・・嬉しいのに・・・・。
社さんが言ったように本当に嫌われていないのなら、彼女に近づけるこのチャンスをぜったいに逃してはならない。
俺は今まで以上に気合を入れた。


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